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  • 2024.01.09 Tuesday
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「正面」を向くということ

 

■1■「知覚正面」という難しそうな単語はしばし横に置き、身体にとっての前ではなく「正面」について考えよう。ダンサーの田中泯さんが「僕の踊りはカメラを正面にしていない」と語った。観客(見る人)のいる方向を正面に見立てて、様々な芸能や演武は為されている。相撲にも正面と向う上面がある。

■2■バレーは観客の視座で自分の姿を見るために鏡の前で練習する。1つ反転がそこにはある。しかし自然の中で身体に沿って踊る泯さんの言う「正面」は意味が異なる。全てが正面なのか、正面はないのか。そういう概念の横滑りではない。泯さんは動物の正面は面ではなく点だと言う。意識の面点変換だ。

■3■脊索動物は進化の過程で呼吸方法を変えて水中より上陸した。前後左右の方向に、重力という上下方向が身体を貫いた。6倍の重力に対して自らの身体を支え動くために四肢を発達させた。顔の角度を90度変えることで進行方向を見据えた。やがて重力に抗して直立すると、顔面は再び90度角度を変えた。

■3■しかし泯さんの言う「動物の正面は点」とは、動物が本能と環境に添って自然と一体となって生きていくことを指しているように思える。鏡は正面ではないが、正面性を意識させる神器ではある。私達は過去の記憶や未来の予測も含めた世界を世界鏡として見据える。3次元空間の中にそれは収まらない。

■4■前世紀末にBOBは「重力は人間の意識の総体」という類の物言いをしていた。それは今でもアリなのかもしれないが、個々の重力力線の一方をたどれば、たしかに地球の中心方向で1つになり、逆方向は全方向に拡散する。見る視座がある顔を「面」と言う。正面は視座の前方でなく後方かもしれない。

■5■人間の意識と関わりのある重力はまた、私達の身体感覚とも分かちがたく係わっている。勝者は重力を味方にする。様々な格闘技は相手を倒して大地に横たわせようとする。柔道やレスリングでは背を大地につけ、腹を天空に向けさせようとする。動物が腹を見せるのは服従のしるしだ。2足歩行と4足。

■6■『あしたのジョー』というアニメに「明日はどっちだ!?」という決めフレーズがあったが、それは明らかに3次元空間の中にはない。もしくは全ての方向が明日だった。芸を極めんとする者は能楽における「翁」という1点の向う側を正面とすることではなかろうか。自らの身体の中心の反転した向う側。

■7■完成された芸術作品に対して正面を向くのではない。自らの人生を1つの壮大な作品として完成すべく生きる、その生きざまを向ける「正面」を考えるということでもある。重力や回転加速度や腸管の蠢きでもある心を繊細に感受する身体そのものが、向けるべき1つの正面そのものでもありはしないか。

■8■観念ばかりの難しげな話ではなく、誰にも身近な身体感覚を通して話を進めようと思ったけれど、結局別の難しげな話になってしまったかもしれない。しかし私達は芸能や哲学だけでなく、いまだ生物進化の途上にあると自覚して、身体感覚も含めて向くべき「正面」について考える必要があるのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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