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  • 2024.01.09 Tuesday
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4値は東に、2値は西に

 

■1■「四句分別・テトラレンマ」は古代インドの仏教僧ナーガルジュナ(龍樹…150〜250年頃)が確定した「世界を観る方法」だが、すでに言及したようにその原型は『リグ・ヴェーダ』のナサディヤ・スクタ(10.129)の中にも見出される。論理学の様々な分野の用語を用いて存在論的な思索がなされている。

 

■2■これは後に「四句分別」の4つの円(「Aである」「Aでない」「AであってAでない」「AではないしAでないということもない」)と言う形で再定式化されることになる。肯定、否定、肯定且つ否定、肯定せず否定せずという4句からなる。なお「テトラ・レンマ」は四句分別のギリシア語訳である。

 

     1 肯定 西洋排中律
     2 否定 西洋排中律
     3 肯定でも否定でもない 東洋容中律
     4 肯定でも否定でもある 東洋容中律

 

■3■またリグ・ヴェーダの中の「宇宙開闢の歌」の冒頭には、無も有もなかったという内容の表現があり、形式化はなされていないものの、ここにも同じ思考スタイルを見て取ることができる。2点を線の両端に固定するディレンマに対して、テトラレンマは4つの端点を持つ正4面体のように自由度が高い。

 

■4■シェイクスピアの戯曲『ハムレット』の中の“To be, or not to be : that is the question.” というセリフの最も有名な訳は、「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」だが、これもテトラ・レンマなら「生きるべきか、死ぬべきか、死んで生きるか、生きも死にもせずか」と深い含意を持つ。

 

■5■テトラレンマとは西洋の「論理」に対して、東洋の「非論理」と呼ばれる。この「非論理」は「無論理」ではなく、西洋論理とは違うもう1つの論理を意味する。テトラレンマとは世界を観る「知性」(intelligence)でなく「叡智」(sophia)だ。西洋の論理知性においてのパラドクスは問題ではなくなる。

 

 

■6■「レンマ」は哲学用語の1つで「律」「句」の意味だ。テトラレンマという名前の思考スタイルは、これを4つ使って構成される。これはインド古来の思考様式と言われている。古代ギリシアに発する西洋のロゴス論理は、それより古いテトラ・レンマの中の最初の二律のみへ特化しての論理と言えよう。

 

■7■ロゴス論理は言わば、「四句分別」(テトラレンマTetralemma)に対して、葛藤という意味を伴う前の「二句分別」(ディレンマDilemma)である。西洋的なものであるロゴス(科学、論理、言語、言語依拠制度、[個物]同一性)を、四句分別は東アジア的に空無化もしくは相対化することを可能にする。

 

■8■古代ギリシアの懐疑主義哲学者ピュロンは、ロゴスの体系化をなしたアリストテレスが教育したアレクサンドロス大王のアジア遠征に加わって、インドを訪れたことがある。そのピュロンについてのアリストクレスによる記述の中には、ピュロンが口にしたとされるテトラレンマ的な言説があるという。

 

■9■釈迦による初期の仏教は、縁起主義に立って四句分別を排している。しかし龍樹は大乗仏教中観派の礎としての『中論』で、四句分別を肯定的に捉えている。また『ジャイナ教綱要』では「七句分別」の主張というものがあり、四句分別と共通するところが多分にあるが、それよりなお複雑になっている。

 

■10■元々はサンスクリット語でチャトゥシュコーティ(catuskoti)が東に行って漢訳の「四句分別」となり、西に行ってギシリャ語の「テトラレンマ」となったが、ギリシアでは「二句分別」の強力なロゴス論理が主となったということだ。別の表現をすれば「4値は東に、2値は西に」ということになろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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