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骨伝導に関する補足



■1■子供の頃初めて録音した自分の音を聞いた時、「こんな声じゃないはず」と思ったものだ。大音量の音楽をヘッドフォンで聞きながら歌詞を口ずさんでも、耳を介さずに自分の声は聞こえる。自分の声が自分の聴覚器官に届くのに、気導音と骨導音という2つの伝達経路があることを知らなかったからだ。

■2■骨導音は気導音に比べて低周波ほど強く、高周波ほど弱く聞こえている。骨導音は特に250Hzあたりの周波数帯域が強いので、他者が効くより自分の声をこもった声として知覚している。つまり自分が声を出す時、他者が聞き、世界に響く音ではなく、自分だけが聞く自分の音を聞いているということだ。

■3■通常、視覚的に他者の視座から見る自分の姿を見ることができないように、聴覚的にも他者が効く自分の声を自分だけが聞こえないのだ。世界に響かせる自分の声を聞くのに、自分の身体(特に骨)が邪魔になる。どうすればその絶対的孤独を超えて他者と声を共有できるのか。ただ単に合掌すればいい。

■4■骨伝導の音は空気を介さず、鼓膜も関与しない人間の骨から直接カタツムリ以降の聴覚神経に伝播する。自然音や打楽器等には超音波が含まれていて、人間の脳波のα波を増加させるという。人間の可聴周波数の上限は2万Hz程だが、骨伝導聴取だと8万〜10万Hzの音でも聞き取るという実験結果がある。

)ただし140デシベルという極めて強い音での話である。

■5■骨伝導ヘッドセットは軍隊、医療関係、病院、警察庁、消防庁、パチンコ店、レストラン等様々な領域で使われている。実際にどこまで聞こえるのだろう。頭頂部や後頭部、首、あご、頬、鎖骨等は良く聞こえ、鎖骨まではどうにか振動が伝わるらしい。しかしさすがに肋骨の振動を聞く者は誰もいない。

■6■晩年耳が聞こえ難くなったベートーベンは、絶望の淵に立たされながらも音楽活動や作曲を止めることはなかった。彼は指揮に使うタクトを口にくわえると、ピアノの音が振動としてタクトを通じて聴覚器官に達することを情熱で発見した。もこれは聞くというより感じるという要素が強かっただろうが。

■7■クジラやイルカはこの骨伝導を用いて音を聞いている。体表面に耳があったら、深海に潜った時に水圧でつぶれたり、長時間水に晒されているので中耳炎になったりするだろう。自分の下あごを聴覚の道具として使っている。水中の方が音の伝播が良く、相互のコミュニケーションに超音波を用いている。














 

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