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水上温泉「水上館」

 

■新潟県の温泉を味わい続けようと思っていたが、今日は雪国に襲来する寒冷前線に追われるようにトンネルを抜けて、関東平野北端まで逃れることにした。そこで月岡温泉からシャトルバスで豊栄に戻り、そこから新潟に出て新幹線に乗り、上毛高原で降りてから水上温泉まで路線バスで戻るという、時間最優先のルートを選択した。

 

 

■月岡温泉でも有名な共同湯「美人の湯」の一番湯をもらってからゆっくり11:00のバスに乗るという手もあったが、結局足早にチェックアウトして9:30のバスに乗った。新潟で昨日と同じ駅傍のタリーズコーヒーで時間調整をする。アメリカ大統領選が気になって、何度かTVニュースやネットをチェックする。順調ならトランプだが。

 

 

■午前中は雲間から陽光が恩寵のように差し込んで美しい天気だったが、新幹線が走り出す頃には灰色の雪雲が青空をすっぽり覆ってしまった。越後湯沢は風交じりの雪で、黒々とした山には白く雪が積もり始めていた。頭の中はまだ秋色を拭えぬまま、薄っぺらな服装で、「雪国」からトンネルを逆に抜けての1人遁走劇を演じている。

 

 

■上毛高原駅。以前ここに降り立つと、晩秋の色合いたっぷりの空気だ。以前、法師温泉を訪れた時もこんな天気だった。上毛高原は冷たい空気というイメージが強い。さてここから路線バスに乗って水上温泉方面に戻る形になる。新幹線の駅構内に暖かい待合室があってよかった。しかもPC用の電源コンセントが沢山備え付けてある。

 

 

■宿は川沿いの「水上館」という鉄筋11階建ての大型旅館だ。連日の「もう沢山です、これ以上食べると苦痛〜」の限界までの豪勢な夕食を外して、一泊朝食付きプランにしてみた。水上温泉でバスを降りると山を越えてきた雪に追いつかれた。チェックインは午後2時からOKなので、早々に入って複数ある温泉で温まることにした。

 

 

■宿も大きいが、部屋も広い。バスも広いトイレも付いている。1人で使うのには十分だ。早速浴槽に向かう。3つの貸切風呂を含めて16種類の風呂を、男女時間交代制にして全てを湯めぐりできるようになっている。先ずは大浴場の「水晶風呂」へ。御影石造りの水晶風呂、総ヒバ造りの内湯、そして対岸に源泉がある樽型露天がある。

 

       

 

■ここの湯は無色透明のカルシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉で、動力揚湯の湧出量は700リットル/分、泉温46.2℃、pHは7.6と分析表には記されている。新潟の濃い温泉たちに入った後では、優しいけれどインパクトが弱いと思えてしまう。まあ大規模な宿の使い方だから、むしろ雰囲気や広い解放感も加味して寛ぐべきだろう。

 

 

■窓の外では紅葉真っ盛りの山々の頂には雪が積もっている。秋と冬がせめぎ合うというよりもつれあい、雪と枯れ葉が強風に吹かれて一緒に流されていく。来るときに食事処をチェックしたのだが、午後休み中なのか閉店したのか閑散としていた。夕刻に散歩して、開いていた普通の食堂で夕食を済ます。温泉街の元気のなさが心配だ。

 

       

 

■夕食時をもって男女が切り替わるので、やはり部屋の近くにある大浴場「牧水の湯」に行ってみる。この牧水は「みなかみ紀行」を書いた若山牧水だろう。「白鳥は かなしからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ」を詠んだ歌人だ。なおこの「みなかみ」は利根川の水源という意味で、水上温泉には足を運んでいないらしい。

 

 

■食事時の直後ということもあり、先客は一人きりだった。露天風呂は改装中で入れなかったが、畳敷きの長い廊下でのアプローチも良い。浴室は濃く立ち上がる湯煙の中、檜の太い柱と梁で支えられた重厚な造りが好ましい。広く取ってある窓の外は、利根川の源流に当たる渓谷で、紅葉がちょうど美しい。湯上り後の休憩処も良い。

 

       

 

■プラン的に宿の方は放りっぱなしにしてくれるので、到着から出発まで気まま快適に過ごせた。朝は5時から残された「奥利根八景」に向かった。この老舗旅館の館内は利根川亭南館・利根川亭北館・谷川亭の3つが合体した複雑な構造で、多数あるエレヴェーターを使うのも注意が必要だ。個人的にはこのダンジョン感は好きである。

 

 

■さて「奥利根八景」に行くことができる唯一のエレベーターで谷川亭地下二階へ。外はまだ暗いのに、すでに何人かが一番風呂に入りに来ていた。浴室内はそれぞれ特徴のある8つの小さめの浴槽があり、窓の外はかなり近い渓流の川面が見えている。湯はみんな同じだが、取り敢えず眠気を覚ますべく1つ1つ入ってみることにした。

 

 

■先ず一番手前には奥利根の湯で、これが一番広い。片側に洗い場が縦についているレイアウトを進むとジャグジー風呂と、月夜野の工芸ガラス使用のクリスタル風呂がある。入ってみると外の光が確かに透けて湯の中に入ってくる。さらにヒノキ風呂、な月夜野焼きの辰砂の湯、三波石使用の洞窟風呂があり、最奥には露天風呂がある。

 

 

■広い浴槽が複数あるのに、このようなプチ温泉ランド風のものは要らない気もするけれど、まあバリエーションを好む客もいるだろうから、これはこれでアリなのだろう。朝食後に改めてここ「奥利根八景」と「牧水の湯」に入って資料写真を撮る。朝食は7時〜9時でバイキング形式。郷土料理メニューも多く、満足して食べられた。

 

 

■水上温泉は上越線水上駅下車から徒歩で5分程とアクセスが良い。しかし暫らく散歩してみて、余りにも多くの温泉旅館が廃墟と化しているのが気に掛かった。開湯は永禄年間というから16世紀中頃か。以来雄大な渓谷美と調和した山中の温泉地だったが、上越線が開通すると、団体旅行客を多数収容できる行楽温泉地として発展した。

 

      

 

■上越新幹線の大清水トンネル工事によって源泉枯れや湯量減少が発生し、公団側よって補償として新規源泉開発がなされた。そしてバブル崩壊後、団体客の減少や客のニーズ変化により急激に衰退した。あの熱海温泉のようにだろう。今日では生き残りを賭けて、温泉保養リゾートを目指しているとか。ぜひとも存続してほしいものだ。

 

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★この老舗の巨大温泉旅館「水上館」は、宿泊部屋や温泉施設だけでなく、一休みするような空間があちこちにあって、実にゆったりしている。そして窓の外は谷川。この渓流は利根川の源流だった。画像の空間は川の上に突出しているんだねこれが。

 

       

 

★そこに紅葉した木々と清冽な流れ、さらには雪も舞うという状況を、暖かい風呂上がりの休憩所からほんやりと眺められるんだよね。設備も人間の在りようも無駄ではなく余裕。雪に追い立てられつつも踏みこたえながら、またもやついエセ文豪ポーズ。

 

 

★それにしても紅葉が物凄い。単に美しいとか色鮮やかというだけでなく、若葉が萌え出ずる春のあの蛍光色のように眩しい黄緑色とも比されるだろうか、緑から赤や黄や橙色へ移行した直後の色合いが鮮烈で眼だけでなく心にまで突き刺さるようだ。

 

 

★こんなに晩秋の木々の色の移り変わりに心を奪われているのは、生まれて初めてかもしれない。温泉巡りの旅なのに、冬の波頭の寒気が雪をまぶしながら色を鮮やかにしているようで、それが風に煽られて次から次へと舞い降りてくる。枯れ吹雪。

 

★鮮やかな色合いに周囲を包まれたまま息をすると、まるで濃い色のついた温泉に全身が包まれた時のように意識が変わり行く。言葉や記憶に定められない何かを思い出そうとしているようだ。日本人の抒情性とか、世界と不二の心の在りようなのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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  • 2017.10.11 Wednesday
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